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春になり、行方眩ます、静電気

今回はいつもとうってかわって,電気のお話

春になると良いことがかなりありますが,私のなかでは,静電気がパチリとこなくなることが,地味に良いことのなかの代表格だったりします。
静電気がパチリと来ると,結構痛みを感じたりします。
車から降りるとき,乗ろうとするときなどは,一応放電処置をするのですが,たまにうっかり忘れていたりしたときに,パチリときます。
なので春が来て,パチリとこなくなるのは,地味にうれしかったりします。

そんなこんなで本日も平常運転です。

静電気がたまりにくくなって良かったなぁと思っていた最近,たまたま電気の問題とちょっとふれあう機会がありました。

無線機いじりが趣味ということもあり,その際電鍵三種というちょっと難しめの試験問題をパラパラパラとめくって解けそうなものがないかなぁと思っていたところ,ちょうど次のものと巡り会ったわけです。
本日は非力ながら,その解説をしてみたいなと思います。

電気の問題

典型的な三角形問題です。
パチリと来る電気を3箇所においてその間に働く力の比を求めよ,というものです。
今回の三角形では,頂点の一つにマイナスの電荷を置き,他の頂点にプラスの電荷を置いて,マイナスの電荷とプラスの電荷に働く力の大きさの比率を求めるというものです。
ちょっと難しめなので一つ一つ考えてみましょう。

(出典: 第三種電気主任技術者試験令和4年上期理論科目第2問より)

一般財団法人電気主任技術者センター 過去問

クーロンの法則とは

昔々,静電気がものを引き寄せたり引き離したりすることに興味をもったクーロンさんがいました。
クーロンさんは,ねじれ秤を用いて帯電した物体について研究した末,次の事実を確認しました。

結果① 力の大きさ: それぞれの物体に与えた電気の量の積に比例,距離の二乗に反比例
結果② 力の向き: 両物体を直線で結ぶ方向
結果③ 引力か否か: 異なる電荷同士だと引力。同じ電荷同士だと反発力。

この発見を静電気に関するクーロンの法則と言います。

これを数式で表現すると,
$$F=k\cdot\frac{{Q}_{\it 1}{Q}_{\it 2}}{r^2}$$
となります。

この際\(k\)はクーロン定数と呼ばれる定数で,
$$k=\frac{1}{4\pi{{\epsilon}_{\it 0}}}=8.987\cdot10^9$$
となります。

これは二つの電荷の間に働く力がどの程度かを示す数式になりますので,これに一つ一つ数字をあてはめていくような形になります。

今回の計算では

どちらの力にもkが入るので,これを省略して数字を入れていきます。

プラスの電荷がマイナスの電荷から引っ張られた上,もう一つのプラスの電気から押しのけられる力

向きが違う力は,平行四辺形のような形で処理することが一般的に知られています。
ここでもそうします。

なおプラスの電荷にかかる力は,いずれも1となります。
そして一方からは引っ張られ,もう一方からは反発を受けるので,プラスの電荷にかかる力は,赤で示した矢印の方向にかかることになります。
その大きさも1です。

(電荷を置いてある正三角形と電荷間の力の向き及び長さで作る三角形とが相似関係になるので、分かりやすく電荷の力1(正確には\(k\)あたり1メートルの矢印をあてています。)

(ちなみに、問題の場合ですと、およそ90億\(N\)の力が働いていることになります。地球上での重さに直すと92万トン(!)です。)

負の電荷がプラスの電荷2個から引っ張られる力

こちらはちょっと計算が厄介です。正三角形の各辺だけで力が構成されていた場合,力の大きさは\(1\)で良かったのですが,そうではない場合一工夫必要です。
そこで赤で示した矢印をよ~く観察すると,これはプラスの電荷のところが60°,マイナスの電荷のところの角度が30°の直角三角形であることが分かります。
とすると中学校のときに習った三平方の定理を用いて,
$$\left({{\frac{{F}_{\it 2}}{2}}}\right)^2=1^2-\left(\frac{1}{2}\right)^2$$
$${F}_{\it 2}=2\sqrt{\frac{3}{4}}=\sqrt{3}$$

(ちなみに今回の問題では、およそ156億\(N\)の力となります。地球上での重さになおすと,およそ159万トンということになります。)

よって正解は

このため計算を進めると,
$$\frac{{F}_{\it 2}}{{F}_{\it 1}}=\sqrt{3}$$
ということになります。

さらに一歩進んで,式の意味するところを確認してみましょう。

静電気に関するクーロンの式は,次のようなものでした。
$$F=\frac{1}{4\pi{\epsilon}_{\it 0}}\cdot{\frac{{Q}_{\it 1}{Q}_{\it 2}}{r^2}}$$
数式に怪しげな文字が出てきています。\({\epsilon}_{\it 0}\)とはいったい何なのでしょうか。またなぜ円周率\(\pi\)が出てくるのでしょうか。

電気力線とは

電気の性質があまりにもつかみづらいものだったので,研究者マイケル・ファラデーは,電気力線という仮想の線を考え出しました。これは電気の力の様子を視覚的に表現する為のものになります。

線の書き方の代表的なルールは,三つ(本当はもっとあります。)。

一つ 電気力線は,プラスの電荷からマイナスの電荷へと向かう線として画くこと。
二つ 電荷のないところで途切れたり,二つ以上の電気力線が交わったりしないこと。
三つ 電気力線の密度は,電気の力の強弱を表すこと。

電気と力を巡る考え方が二通りありますが,現状優勢なのは,電荷が空間に影響を与え,別の電荷が,自身と近接する空間から影響を受け,力が生じるという考え方(近接作用説)です。

そのため、電荷と場の応答性を関連付ける要素があるということになります。

それこそが\({\epsilon}_{\it 0}\)という数字になります。これはいわば電気力線の通しやすさのような数字となります。

実は、たとえ電荷の量が同じであったとしても、場が何で構成されているかで電場の力は弱くなったりします。このため、電気力線の本数だけを物理量として用いるのは式が複雑になってしまうという考え方があります。そこで電荷の量と固定的に対応した「電束」という概念を新たに設け、「電束」から「電気力線」が出てくるという風に考えました。

このためある地点における電束の密度を\(D\)とした際、電場の強さ\(E\)との間には、次のような関係が生じます(ただし真空中の場合)。

$${\epsilon}_{\it 0}E=D$$

なぜ円周率\(\pi\)が出てくるのか。

電気力線は互いを嫌っているので、空間中に電荷をおいた場合、そこから互いに重なることなく、一定の距離を保ったまま空間中に拡散していきます。
ここで一手間加え,電荷を中心にして,穴の開いていない球体で囲ってしまうという操作をします。
そうなりますと、電荷の場所から距離\(r\)の地点における電気力線の密度、すなわち電場の強さは、半径\(r\)の球体の表面積で割った値となります。
このため、電荷\(q\)から距離\(r\)の地点における電束の密度は、
$$D=q\frac{1}{4\pi{r}^2}$$
となるのです。

「すべての電気力線の本数」を数えてみましょう。

ある電荷の周囲に生じる電場の強さは、電場の強さを計測する場所における電気力線の本数を数えるのに等しいわけです。

ということで、測定する場所だけといわず全部数えてみましょう。

数え方には大きく2つあります。

一つは出てきた電気力線をすべて数え上げる方法です。

もう一つは、出ていく電気力線をすべて数え上げる方法です。

出てきた電気力線を全部数えましょう~電場に関するガウスの法則積分形

電場の強さをはかる計測機器の先端(単位電荷1の電荷)に生じる力の単位ベクトル(大きさが1の、向きだけを表すベクトルのことです)を\(e\)とし、電場の強さを表現すると、

$$E=q\frac{1}{4\pi{r}^2{\epsilon}_{\it 0}}e$$
となり、両辺に\({\epsilon}_{\it 0}\)をかけてあげると
$$D=q\frac{1}{4\pi{r}^2}e$$
となります。

ここで、電荷を取り囲む球体を考えます。この式は、電荷\(q\)から距離\(r\)の地点における電束の密度があらわされるわけですから、全体に表面積をかけてあげれば、電束の総量がわかることになります。
またこの際、足し算の約束事についても考えておく必要があります。その約束事とは、足し合わせる電束の線は、あくまでも球の表面積のごくごく小さい部分に対し、垂直に貫通する成分だけを足すということです。

このため表面積のごくごく小さい部分に対し垂直となる単位ベクトルを\(n\)とし、\(e\)と内積を取って掛け合わせます。

なお今回は球体でイメージしていますので、\(n\)と\(e\)の向きは同じなので、
$$|n|\cdot|e|\cdot{cos(0)}=1$$
ということになり、内積は1となります。

このため、
$$D\cdot{n}\cdot{4\pi{r}^2}=q$$
となります。

さりげなく表面積をかけましたが、これはいわゆる面積で積分をしたと同じ意味合いになります。

(なお元々のクーロンの式における\(r^2\)と面積を乗じた際の\(r^2\)は厳密には異なるという理解が重要です。というのも、クーロンの式における\(r^2\)は実験結果によって得られた実験結果であって、面積を乗じた部分は、厳密にその面積そのものだからです。なのでクーロンの法則における逆二乗法則と異なる実験結果が得られたら式が成立しなくなります。)

よって任意の閉曲面(有限の大きさをもち、開いていない面(=空間を分けている面です。どこかが開いていると空間を分けていません。)。必ずしも球体に限られない。)を貫通する電束を面積分すると、

$$\int_S^{}D\cdot{n}\cdot{dS}=q$$

となります。

これが電場に関するガウスの法則の積分形式となります。
電荷があるとそこから電束が出入りすることを表しています。

出ていく電気力線を全部数えましょう~電場に関するガウスの法則微分形式

これまでは、閉じた曲面にぶつかる電気力線の本数を数えました。次は、ある点から出ていく電気力線の本数を数えてみましょう。
「点」といっても、大きさのない「点」の想定はなかなか現実的ではないので、ごくごく小さい体積から出てくる電気力線の本数を数えてみましょう。

ここで、電場の強度を\(E(x,y,z)\)で定義します。これは、3次元区間のある一点をさし、その場所での電場の強度を計測するということです。

まず\((x,y,z)\)について考えてみましょう。

これらよりほんの少しだけ多い量をそれぞれ\((dx,dy,dz)\)とします。

先ほど電場の強さとは、ある面積を貫通する電気力線の本数のことだとしました。

よって\((dx,dy,dz)\)をそれぞれ掛け合わせることで、それぞれの微小部分が作り出す面\((dxdy,dxdz,dydz)\)を考えることができます。

はじめに、\(x\)軸を基点に考えます。
\(x\)軸に直行する平面は、\(dydz\)となります。
ようは\(x+dx\)の地点における平面\(dydz\)を貫通する電気力線から、\(x\)の地点におけるそれを差し引いてしまえば、\(x\)から\(dx\)の間の箇所から出てきた電気力線の本数がわかります。

これを数式に起こすと、

$${E}_{\it x}(x+dx, y , z)dydz - {E}_{\it x}(x, y , z)dydz$$

となり、

$$\frac{{E}_{\it x}(x+dx, y , z) - {E}_{\it x}(x, y , z)}{dx}dxdydz$$

となります。

これは変数\(y,z\)については固定したうえ、\(x\)についてだけ微分をするということで、偏微分ということになります。

よって、

$$\frac{\partial{{E}_{x}}}{\partial{x}}dV$$

なお\(dxdydz=dV\)とします(\(dV\)は小さな体積ということです。)。

以上のような操作を、\(y,z\)についても行うことで、

$$\frac{\partial{{E}_{y}}}{\partial{y}}dV$$
$$\frac{\partial{{E}_{z}}}{\partial{z}}dV$$

を得ます。

この3つの流量を足し合わせれば、微小な体積部分から出ていく電気力線の本数がわかります。

足し合わせると、
$$\left(\frac{\partial{{E}_{x}}}{\partial{x}}+\frac{\partial{{E}_{y}}}{\partial{y}}+\frac{\partial{{E}_{z}}}{\partial{z}}\right)dV$$
となります。

さて、話がかわりますが,ここで大革命をします。
これまでの計算式において、電荷\(q\)が度々登場してきましたが,実は\(q\)に大きさを与えていませんでした。

ここで有限の大きさを与えようかと思います。

大きさを与えたので、体積あたりの電荷ということで,電荷の密度というものを考えることができるようになりました(電荷は一様に分布するものとします。)。
電荷の密度を\(\rho\)とします。
この\(\rho\)は電荷の密度なので、体積で積分をしてしまうと、もとの\(q\)に戻ります。
一方、先ほどの微小部分から出てきた電気力線の本数を体積全体ですべて足し合わせ、これに\({\epsilon}_{\it 0}\)をかけ合わせれば、もともとの電束の総量、すなわち電荷量になるはずです。

では計算してみましょう。

$$\int_V^{}{\epsilon}_{\it 0}\left(\frac{\partial{{E}_{x}}}{\partial{x}}+\frac{\partial{{E}_{y}}}{\partial{y}}+\frac{\partial{{E}_{z}}}{\partial{z}}\right)dV
=\int_V^{}\rho\cdot{dV}$$

この式をよく見ると、同じ体積分をしています。ということは、積分をする前も同じであったはずです。

よって、

$${\epsilon}_{\it 0}\left(\frac{\partial{{E}_{x}}}{\partial{x}}+\frac{\partial{{E}_{y}}}{\partial{y}}+\frac{\partial{{E}_{z}}}{\partial{z}}\right)dV
=\rho$$

つまり、

$$\left(\frac{\partial{{D}_{x}}}{\partial{x}}+\frac{\partial{{D}_{y}}}{\partial{y}}+\frac{\partial{{D}_{z}}}{\partial{z}}\right)dV
=\rho$$

ということができます。

つまり電荷密度が存在すると、3次元空間に電束密度が出ていくとともに、電束密度は、電荷密度と比例することを表しています。

マクスウェルの方程式が一つ~マクスウェル - ガウスの式

以上までに説明したものが、電荷と電場の強さを説明するマクスウェルの電磁方程式がひとつ、マクスウェル - ガウスの式となります。

クーロンの法則を出発点として説明したことからも明らかなように、クーロンの法則をより一般化したものが、電場に関するガウスの法則となります。

クーロンの法則では、大きさがない電荷を対象としており、ガウスの法則として発展を遂げたことによって、大きさのある電荷をその対象とすることができるようになりました。

私自身、電気は趣味としているだけで、仕事にしているわけではないのですが、琥珀をこすったら羽が吸い付くからスタートして今日まで発展してきた積み上げには、すごいものを感じます。

日々、積み上げができているか、いささか不安が残る毎日ですが、これからも日々精進あるのみです。

ということで、本日は趣味の分野から、クーロンの法則とガウスの法則のご紹介でした。

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