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Coffee Break2!~ネット配信の記事っていろいろありますよね?

ふとした瞬間,スマホをみるとネット記事の配信が。2

今回流れてきたスマホ記事は次のようなものです。
すなわち

\(a^2+b^2+c^2=292\)となるような自然数\(a,b,c\)をすべて求めよ!

というもの。

前回と比べて\(c\)が増えています。
ちょっとやっかいです。二つだけでもやっかいだったのに三つになってしまいました。

とりあえず数字を眺めてみましょう。

とりあえずやってみる素因数分解

右辺の292に注目してみます。
これを素因数分解してみると
$$292=2\cdot{2}\cdot{73}$$
となりました。

73で止まってしまいました。
この73ですが,実は素数です。

素数は1とその数でしか割り切れない数のこと。
難しい言い方をすると正の約数が1と自分自身のみであること。

私自身,73が出てきた時点で,「あれ? 割れないぞ?」と思い至りました。

素数を判定する方法は,いくつかあるのですが,主要な方法は一つ。すなわちそれより小さい既知の素数で一つずつ割ってみて,割れないことをひたすら確認していく,というもの。

今回73は素数なのでこれ以上割れず,素因数分解はここで終わりです。

実はとっても難しい素因数分解

$$292=2\cdot{2}\cdot{73}$$

素数のかけ算で表す素因数分解をさらりとしていますがこれは十分に小さい数字だからこそできる芸当になります。

実はこの素因数分解というヤツは,計算機が苦手とする計算方法TOP10に入るようなものとなります。

実際にやってみればわかりますが,手計算で素因数分解を行う場合,おそらく無意識のうちに,すべての組み合わせを試すような計算をしています。

少ない桁数であればすべての組合せを試すような計算は容易です。

しかし桁数が増えれば増えるほど,総当たりで計算しないといけない組み合わせは,あるところを境にいきなり爆発的に増大します。

しかも,素因数分解を効率的に行うアルゴリズムは未だ見いだされていません。
(2023年時点。また十分な処理能力を備えた量子コンピュータが状況を変えてしまう可能性が指摘されています。)

たしかにものすごく時間をかければ,いつかは計算できてしまうことは,手計算でやるときと同じです。

ただ数千ケタとかの場合,現在の最新コンピュータを使っても人類文明が存続している間? または宇宙が終わるまでに計算が終わるかどうかわかりません。

他方,素数のかけ算をするのは実に容易です。電卓でも簡単にできます。

このような性質を持つ関数を一方向性関数と言い,現代のインターネットが快適,安全に利用できる理由はこのあたりにあるのですが,これはまたの機会に。

与式全体を4で割ります。

素因数分解の結果,4が含まれていることがわかったので,与式全体を4で割ってみます。すると,$$\frac{a^2}{4}+\frac{b^2}{4}+\frac{c^2}{4}=73$$となります。
さて4で割った際73になるということは,\( \frac{a^2}{4}+\frac{b^2}{4}+\frac{c^2}{4}\)は4で割り切れるということになります。
前回,4の倍数と4で割ったときに余りが1,2,3となる数を二乗して4で割った後の余りはそれぞれ 0,1,0,1になるとしました。

つまり2以上のある数を二乗して4で除した際の余りは,たかだか1にしかならないのです。

ここからすると,全体として\( \frac{a^2}{4}+\frac{b^2}{4}+\frac{c^2}{4}\)が余りなしになるには,\(\frac{a^2}{4}\),\(\frac{b^2}{4}\)及び\(\frac{c^2}{4}\)はそれぞれ割り切れる必要があります。

このため,\(a,b,c\)は2の倍数である必要があります。

右辺に注目~右辺は73つまり奇数!

さて,任意の3つの整数を足して得た数が奇数になるには,(1)3つすべての整数が奇数である,(2)3つの整数中一つが奇数,二つが偶数であることが必要です。
ここで\(n\)を自然数とし,\(x_n=\frac{(2n)^2}{4}\)からなる数列を考えます。
つまり$$ x_n=1,4,9,16,25,36,49,64,81,\cdots,\frac{(2n)^2}{4}$$という数列です。
なお上限が73なので,$$ 1\leq{n}\leq 8 $$となります。

場合分けをしてみましょう。

総当たりで出せそうと思ったのでとりあえず場合分けをして,総当たり計算してみましょう。

(1)三つとも奇数の場合
   (1-1)\(49+25=74>73\) ・・・・・・73を超えてしまったので不適です。
   (1-2)\(49+9+9=67<73\) ・・・・・・73未満なので不適です。
   (1-3)\(25+25+9=59<73\)・・・・・・73未満なので不適です。
  いずれも73を超えるか下回るので該当する組み合わせはありません。

(2)一つだけ奇数,残り二つは偶数の場合
   (2-1)\(73-(64+4)=5\)・・・・・・5は数列中にありません。不適です。
   (2-2)\(73-(36+36)=1\)・・・・・・1は数列にあります。OKです。
   (2-3)\(73-(36+16)=21\)・・・・・・21は数列中にありません。不適です。
   (2-4)\(73-(36+4)=33\)・・・・・・33は数列中にありません。不適です。
   (2-5)\(73-(16+16)=41\)・・・・・・41は数列中にありません。不適です。
   (2-6)\(73-(16+4)=53\)・・・・・・53は数列中にありません。不適です。
   (2-7)\(73-(4+4)=65\)・・・・・・65は数列中にありません。不適です。
以上から数列にある数を足し合わせて73になる組み合わせは\(36,36,1\)のみとなります。

もうちょっと数学的に求めてみたい場合

もうちょっと数学的に求めてみたい場合,次のようにしてみましょう。
さて,とりうる数は2の倍数であることから,
$$a=2l, b=2m, c=2n$$
とします(\(l,m,n\)は任意の自然数とします。)。この場合
$$\frac{(2l)^2}{4}+\frac{(2m)^2}{4}+\frac{(2n)^2}{4}=73$$
$$l^2+m^2+n^2=73$$
となります。

これを4で割ってみます。すると
$$\frac{l^2}{4}+\frac{m^2}{4}+\frac{n^2}{4}=\frac{73}{4}$$
となります。
73を4で割った場合,商が18,余り1であることがわかります。

ある数を二乗して4で割った場合の余りは多くとも1にしかならないので,この式を構成する項の余りは,余りが多い順からみて\((1,0,0)\)となるはずです。

二乗した数を4で割って余りが1になる数は,

$$1,3,5,7$$

あたりになります。9は73を4で割って得た商を超えるので不適となります。

では,73から余り1になる数を引き算してみましょう。
\(l\)を二乗して4で割ったら余り1の数とします。

$$73-l^2=73-1^2=m^2+n^2=72$$
$$73-l^2=73-3^2=m^2+n^2=64$$
$$73-l^2=73-5^2=m^2+n^2=48$$
$$73-l^2=73-7^2=m^2+n^2=24$$

が得られます。これをさらに4で割ってみましょう。すると
$$\frac{m^2}{4}+\frac{n^2}{4}=18$$
$$\frac{m^2}{4}+\frac{n^2}{4}=16$$
$$\frac{m^2}{4}+\frac{n^2}{4}=12$$
$$\frac{m^2}{4}+\frac{n^2}{4}=6$$

\(m,n\)が取り得る値は2の倍数ですから,

$$2,4,6,8,10$$

で,これを二乗して4で割ると

$$1,4,9,16,25$$

となります。このうち,二つの数字で,\(18,16,12,6\)を構成しうるのは,9二つの場合で,18のみとなります。

以上から該当する組合せは,
$$(l,m,n)=(1,6,6)$$
のみとなります。

以上から今回の答えは

さて,ここで\(a\leq{b}\leq{c}\)とします。この場合,題意を満たしうる\(a,b,c\)の組み合わせは,
$$(a,b,c)=(\sqrt{1\cdot{4}},\sqrt{36\cdot{4}},\sqrt{36\cdot{4}})=(2,12,12)$$となります。

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