・遺言書を書くときに気をつけたいこと。
誰かに財産を残したい・・・・・・、そういうときに作成するのが遺言書になります。
遺言書とは、故人の最終的な意思を表明するための手段であり、そのため民法は特別の規定を置いています。
特別な規定については、後日に譲るとして、今回は、故人の最終意思表明手段としての遺言において、特に気をつけたいことについて考えてみたいと思います。
遺言書とは、故人の最終的な意思を表明するための手段であり、そのため民法は特別の規定を置いています。
特別な規定については、後日に譲るとして、今回は、故人の最終意思表明手段としての遺言において、特に気をつけたいことについて考えてみたいと思います。
・問題の所在
さて先ほど、遺言が故人の最終的な意思を表明する手段であると説明しました。
そこで問題になるのは、遺言に書いていないことについて、どこまで読み取るのかということです。
例えば次のような事例を考えてみましょう。
遺言者: 資産家のお父さん,またはお母さん
相続人: 配偶者と3人の子
この事例において,遺言者が長年自らの事業に苦労してくれた長子に全財産を譲ろうと考えたとします。
このため遺言者は,「全財産を長子に相続させる」という内容の遺言書を書きました(これ以外に記載内容はないものとします。)。
ここで表明された意思は「全財産を長子に相続させる」というものです。
そして遺言の効力は遺言者が亡くなった時に生じるわけですから,その時点で長子が生きていれば遺言の効力が発生することになります。
問題は遺言者が亡くなる以前に長子の方が亡くなったときです。
遺言者が置かれた状況を加味してみましょう。
例えば長子の方が長年遺言者の事業を手伝ってきたものの,長子以外の方々が放蕩の限りを尽くし,遺言者もあきれていた,そういう状況を加えます。
このような状況が加われば,「長子に相続させる」という意思表示は,「他の相続人には相続させたくない」趣旨なのだろうなぁ,長子が先に亡くなったりした場合には、当然,長子の相続人に相続させ趣旨に出たのだろうなぁ,と考えることもあるかと思います。
この場合において,相続開始前に長子が亡くなったときに,その子らだけが,亡くなった長子に代わって(代襲して)相続することができるかという問題が生じるのです。
そこで問題になるのは、遺言に書いていないことについて、どこまで読み取るのかということです。
例えば次のような事例を考えてみましょう。
遺言者: 資産家のお父さん,またはお母さん
相続人: 配偶者と3人の子
この事例において,遺言者が長年自らの事業に苦労してくれた長子に全財産を譲ろうと考えたとします。
このため遺言者は,「全財産を長子に相続させる」という内容の遺言書を書きました(これ以外に記載内容はないものとします。)。
ここで表明された意思は「全財産を長子に相続させる」というものです。
そして遺言の効力は遺言者が亡くなった時に生じるわけですから,その時点で長子が生きていれば遺言の効力が発生することになります。
問題は遺言者が亡くなる以前に長子の方が亡くなったときです。
遺言者が置かれた状況を加味してみましょう。
例えば長子の方が長年遺言者の事業を手伝ってきたものの,長子以外の方々が放蕩の限りを尽くし,遺言者もあきれていた,そういう状況を加えます。
このような状況が加われば,「長子に相続させる」という意思表示は,「他の相続人には相続させたくない」趣旨なのだろうなぁ,長子が先に亡くなったりした場合には、当然,長子の相続人に相続させ趣旨に出たのだろうなぁ,と考えることもあるかと思います。
この場合において,相続開始前に長子が亡くなったときに,その子らだけが,亡くなった長子に代わって(代襲して)相続することができるかという問題が生じるのです。
・平成23年2月22日最高裁判所第三小法廷判決の骨子
被相続人死亡前に,「全財産を相続させる」とされた相続人が死亡したとき,その遺言書の効力はどうなるのかが争われたケースがありました。
このケースにおいて,最高裁判所第三小法廷は,
「「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合」「には」「遺言者が」「当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り」「その効力は生じない」としました。
その「特段の事情」としては,最高裁は次のとおり示しています。
① 当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係
② 遺言書作成当時の事情
③ 遺言者の置かれていた状況
つまりこれら「特段の事情」からして,遺言書に明確に書かれているわけではないけれども,相続させるとした相続人が遺言者よりも亡くなったときは,その代襲者に相続させる意思を有していたのだなと認められる場合には,遺言書の効力が生じ,相続させるとされた相続人の相続人も相続できる余地が生じることになります。
最終的には「状況」も判断材料になるのですが,やはり重要なのは遺言書の記載になります。
(なお裁判所が「特段の事情」とするときは,原則として認めないけれども,場合によっては認める必要が生じる可能性がありうるので,そのために判断の余地を残すという意味合いがあります。)
このケースにおいて,最高裁判所第三小法廷は,
「「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合」「には」「遺言者が」「当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り」「その効力は生じない」としました。
その「特段の事情」としては,最高裁は次のとおり示しています。
① 当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係
② 遺言書作成当時の事情
③ 遺言者の置かれていた状況
つまりこれら「特段の事情」からして,遺言書に明確に書かれているわけではないけれども,相続させるとした相続人が遺言者よりも亡くなったときは,その代襲者に相続させる意思を有していたのだなと認められる場合には,遺言書の効力が生じ,相続させるとされた相続人の相続人も相続できる余地が生じることになります。
最終的には「状況」も判断材料になるのですが,やはり重要なのは遺言書の記載になります。
(なお裁判所が「特段の事情」とするときは,原則として認めないけれども,場合によっては認める必要が生じる可能性がありうるので,そのために判断の余地を残すという意味合いがあります。)
・遺言書は,死後の法律関係を定める『最終的意思表示』
最高裁の判断の理由,それは遺言書が,死後の法律関係を定める『最終的意思表示』になるからだと思われます。
遺言書は,遺言者の意思を,死後の法律関係の設定という効果を伴う形で表明します。
このため,残された人たちの法律関係が明確になる必要があります。
そこで民法は,遺言の方法について特別な規定を置き,一定の厳格な手続きで表明した意思を遺言として扱うこととしました。
遺言書に書かれていることが「い」の一番に重要であり,原則として,遺言書に書かれていないことを「これが故人の意思だ!」というふうに扱うことはできないわけですね。
(言うだけならばどうとでも言えるので,争い・混乱が深まることになりかねません。)
残された人たちの争いを生まないためにも,明確な遺言書の作成が必要です。
遺言書は,遺言者の意思を,死後の法律関係の設定という効果を伴う形で表明します。
このため,残された人たちの法律関係が明確になる必要があります。
そこで民法は,遺言の方法について特別な規定を置き,一定の厳格な手続きで表明した意思を遺言として扱うこととしました。
遺言書に書かれていることが「い」の一番に重要であり,原則として,遺言書に書かれていないことを「これが故人の意思だ!」というふうに扱うことはできないわけですね。
(言うだけならばどうとでも言えるので,争い・混乱が深まることになりかねません。)
残された人たちの争いを生まないためにも,明確な遺言書の作成が必要です。
・相続させるとした相続人が先に亡くなってしまうリスクにどう備えるか?
相続させるとした相続人が先に亡くなってしまった場合,場合によりその遺言の効力が生じない可能性があり得ます。
このような場合にも効力を発生させるためには,遺言者の意思を,可能な限り正しい形で表明するしかありません。
一例としては,「相続させるとした相続人が遺言者よりも先に,同時に亡くなったときは,その相続人に相続させる」と書いたりします。
遺言が効力を発生させるまでには,数々のリスクが存在します。
それらのリスクを見極め,簡明・適切な法的文書として整える必要があります。
このような場合にも効力を発生させるためには,遺言者の意思を,可能な限り正しい形で表明するしかありません。
一例としては,「相続させるとした相続人が遺言者よりも先に,同時に亡くなったときは,その相続人に相続させる」と書いたりします。
遺言が効力を発生させるまでには,数々のリスクが存在します。
それらのリスクを見極め,簡明・適切な法的文書として整える必要があります。
・ご相談を
以上のように遺言書を作ることができても,その内容と遺言者が亡くなられた時の状況によって遺言書は無効になったりします。
無効になるリスクのみならず,遺留分といって相続人が最低限相続を受ける取り分の侵害によって,相続させるとした相続人がトラブルに巻き込まれたりするリスクもあります。
このようなリスクを可能な限り低くし,円滑な相続準備をするには,専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。
無効になるリスクのみならず,遺留分といって相続人が最低限相続を受ける取り分の侵害によって,相続させるとした相続人がトラブルに巻き込まれたりするリスクもあります。
このようなリスクを可能な限り低くし,円滑な相続準備をするには,専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。